第13回日本音楽医療研究会学術集会 

大会長 平山 正昭 

名古屋大学大学院 医学系研究科 病態解析学 准教授 / 脳神経内科学 

 


ご挨拶

 

この度、第13回日本音楽医療研究会学術集会を愛知県一宮市で開催させていただくことになりました。

 

実は、私は音楽療法の専門家ではないのですが急遽代役として行うことになりました。そのため、現在の音楽療法の実態を知りません。以前取り組んでいた頃と変わってきているのかもわかりません。私自身も現在の音楽療法について知りたいと思い、以下のテーマを立てて議論するのを楽しみにしています。

今回のテーマは「音楽療法は医療に本当に貢献できるか −シンギュラリティを迎えて変化する医療への関わり− 」としました。私が今中心として行っている研究は次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の解明ですが、この分野はここ数年で飛躍的な進歩を遂げ昨年のデータではすでに時代遅れといわれています。医療も大きく変動しています。診療に関する情報も AI の進歩によって機械学習を通して新しい見方が発見されています。また遺伝子分野では、病気だけではなく個々の性格に対する関連遺伝子など多く報告されています。リハビリ領域ではサポートマシンによる支援機器や brain-machine-learning による義体制御などが開発されてきましたが、それ以外のリハビリに関しては大きな変化は見られていないのが現状です。私たちの臨床の力は進歩したのでしょうか。多くの知識の増加や検査方法の進歩などがありますが、今一度、臨床の現場に戻って、問題点を明らかにし、より広く、深く音楽療法を理解する方法を学び、再考してみたいと思います。

 

シンポジウムを通じて、参加者のさらなるスキルアップを期待すると共に、国内の友人や仲間との再会、交流、さらには新しい友人との出会いなど、学会ならではの機会を楽しんでいただければ幸いです。会場は、私の地元の一宮駅前ビルにしました。名古屋駅から10分であり、名古屋市内の会場よりもアクセスは容易です。愛知は観光するところがないと地元民は言っていますが、自動車ファンには垂涎のトヨタ博物館や陶器のノリタケの森など隠れた名所もあります。また、メイド喫茶の発祥地で、コスプレサミットが毎年催されるオタク文化の町でもあります。ビルが林立する名古屋駅の周りの探索もできますし、一宮市はモーニング発祥の地とされ、喫茶店も多数あります。観光案内も掲載予定です。

多数の皆様のご参加を期待します。

2019年5月 

 

 

 

 

大会長の平山が顧問を務めている愛知県パーキンソン病友の会前会長の木村順一さんに、以前本にされた切り絵をホーム画面に使ってもいいかお尋ねしたら、絵や切り絵は好きなのでと、新たに作ってくださいました。

 

木村さんに音楽療法についてご寄稿いただきました。


 

パーキンソン病を患って13年たった。私の周りに言葉の聞き取りにくい仲間が増えてきた。適当にふんふん聞くのは失礼なので、「え?何?もう一回言って」と何度も聞いていると、だんだん会話が途絶えてしまう。

音楽療法について、知らない頃はお年寄りが幼稚園児のようにチイチイパッパと歌っているような偏見を持っていた。今は不思議な魅力を感じている。例えば、聞き取りにくい言葉でもリズムに乗せて声を出すときれいに聞こえる。足がすくむとき、床にラインを引いてそれを目安にするとすたすた歩けることと同じように思う。声についても同じようにすくむことがあるのではないか。呼吸やリズムを意識して声を出すと声のすくみが解きほぐれていく。医学的なことは分からないがその感覚が確かにある。

言葉は用事を人に伝えるだけの道具ではない。言葉の中には言っても言わなくても生活に支障がないものがある。「ああ、きれいな夕日!」とか「今日は元気?」とか、冗談をいうとかであるが、それらの言葉は役立たずの言葉でなく、生活に潤いを持たせ、情緒を養う意味のある言葉である。気持ちが落ち着いてくる。仲間とふれあう実感がある。歌や音楽の中にそれを気づかせてくれる力がある。それ故、皆さんは真剣に参加しておられる。音楽療法の不思議な魅力であろう。 



令和の時代になって、変えていくこと、次の時代にも大切につないでいくこと、色々な話ができましたら望外の喜びです。

 運営委員一同